記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「だとしたら、どうだって言うの?」
「……親父をぶん殴りに行きたいね」
そう口にいた朔の微笑んだ顔は、美しく、そして危険なほど冷たいものだった。
張り詰めた空気の中、スマートフォンのバイブ音が嫌に大きく聞こえた。
でも正直、今の雪乃にはありがたい。
鞄からスマートフォンを取り出し画面を見ると、香穂からメールが入っていた。
「どうした?」
「香穂からメールがきたみたいで……えっ!」
メールを開いた雪乃は、無意識に大きな声を出していた。
「彼女は何て?」
「……子供が熱出したって旦那さんから連絡があったみたいで、早めの便に変更してもう乗るところだって」
「それじゃあ、間に合うわけないな」
「それについては、メールで謝ってる。だから、気にしないでって返しとく」
「仕方ないさ、離れた地にいて、子供が熱出したって連絡がきて気にしない親はいないだろ」
「う、うん。そうだよね」
食事に戻った朔から目を反らし、スマートフォンの画面に目を戻し、彼に気付かれないようにため息を吐いた。
香穂からのメールの文章の中身は、早めの帰国と謝罪だけではなかった。