記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「だ、大丈夫。時間通りだね」
「うん。楽しみだから、仕事がはかどったよ。服を着替えてから料理を運ぶの手伝うから、扉は開けといて。こっちも開けたままにしとくから」
朔はにっこりと子供のように微笑むと、自宅の鍵を開けて扉を開けたまま奥へと入っていった。
雪乃もそれにならって扉を開けたままにして、せっせと料理を運び始める。手伝うと言っていたが、仕事で疲れているであろう彼に手伝わせようとは思っていない。
次々と皿と料理を運び込み、とりあえずコの字型の広いキッチンに置いて、卓馬の家の施錠をしてから朔の家の扉も閉めた。
初めて入る朔の家。
作りはまったく卓馬の家と同じなのに、匂いが違う。
彼が近づくたび、軽く香る爽やかな香りが室内でも漂っている。
「あれ? 全部、一人で運んじゃったの?」
勝手に部屋を見回すわけにはいかないとキッチンで俯いていると、そんな声をかけられた。
少しほっとして顔を上げると、キッチンの入り口でジーンズに白いTシャツの上にカーディガンという服装に着替えた朔が目を丸くしていた。
「たいした量じゃなかったから」
抱く気持ちが変わっただけで、こうまで違うのかと思うほど朔を直視していられず、料理に向き直ってサランラップを外しはじめる。
「うわー、すごく美味しそう。ありがとう」
「何が好きかわからないから、普段通りのものにしちゃったけど」
洗礼されたスーツ姿の朔を見た後では、こんな子供っぽい料理でいいのか自身がなくなってきていた。
雪乃が作ったのは、ハンバーグとポテトサラダ、グラタンと手作りコーンパン。
大人の口にいれるようなものじゃない。