記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「ヒナは、どんなコーヒーが好み? どっちか? それとも両方?」
「私はミルク一つと砂糖三杯のコーヒーか、カフェオレが好き」
「了解。覚えておくよ」
嬉しそうに雪乃が言った通りのコーヒーを作った朔は、ソファーの前にあるガラスのテーブルにカップを置いた。
代わりに雪乃は彼の分の皿を押しやった。
いつもの習慣でニュースのついているテレビに目を向けながらシナモンロールを頬張っていると、食べづらいほどの視線を横から感じた。
ちらりと目だけで見れば、隣に座っている朔が前のめりになって膝に頬杖をついて見ている。
「なんで見てんのよ。さっさとあんたも食べちゃいなさいよ」
大口を開けて頬張っている姿を間近で見られているという恥ずかしさに抗議すれば、目線を下に落として呆れたようなため息を吐かれてしまった。
「あのさあ、付き合い出すんだからさあ……テレビなんかじゃなくて、俺と会話をしながら食事しようよ」
「ああ、そういうこと。卓馬とはいつもこんな感じだから慣れちゃっ……んっ!」
「朝の二人きりの時間に、他の男の名前を口にしないで」
距離が離れていないだけに、朔の伸ばされた手が簡単に雪乃の口を塞いだ。
「心が狭いって自分でも思うけど、十年側にいた卓馬に嫉妬してるんだよ。俺も、一緒に大人になりたかった」
腕を下ろして眉をハの字にした朔は、自虐的に笑った。
「ごめん、変なこと言って」
雪乃と同じようにテレビに目を向けた彼は、膝に腕をつきながら平らげていく。
かける言葉が何も浮かばず、残りのシナモンロールをコーヒーで流し込みながら、画面を見つめた。