零度の華 Ⅱ
リビングへ入ろうとすると、沙也加が目の前に現れる
その手には包丁が握られているが、震えているのが分かる
『人を殺したことのない人間が、あたしを殺せるのか?』
「確かに殺したことはないけれども、貴女を殺すことに抵抗はない」
『そのわりには、手が震えているぞ。医者は命を救う者であり、奪うことはしてはけない。医者であるお前が、こんなことをしていいのか?』
下唇を噛み、悔しい表情を残して言葉は発しない
それをいいことにあたしは言葉を続ける
『医者は医者でも、お前は闇医者だ。人を殺そうが救おうがどうでもいいことだろ。医者だと、名乗る程じゃないんだからな。それより、橘はどこだ』
先程からずっと姿を見かけない
外に出て行っているということが分かる
「教えるわけないじゃない!!お願い、もう私達に関わらないで。私達が貴女に何をした?貴女に害を与えた?」
今にも泣きだしそうな顔であたしを見る沙也加
それを見るあたしはくだらない、と思うだけ
あたしに害を与え、あたしの邪魔をしているのであればとっくに殺している
『あたしがお前達を殺す理由は1つだけ。必要のないガラクタを処分すること』