零度の華 Ⅱ
赤ん坊は沙也加と違って、泣き止んであたしの中で静かに眠っている
これ以上、沙也加に何を言ってもどちらも選択することはないだろう
構わない
聞かなくても、ここで暮らしていることは分かっているから戻ってくることは間違いない
『名前は何だ?』
あたしは沙也加に視線を向ける
「おね、がい......。そ、の、子だけ、は...ころ、さ...ない、で...」
質問の答えじゃない
沙也加はだんだん青白くなっていき、正気を失っている
ただずっと「殺さないで」と呪文のように、言い続ける沙也加を不気味に感じた
そこまで子供に執着するものだろうか
あたしは抱き抱えていた赤ん坊をベットへと戻す
そして、横たわっている沙也加に近づき、見下す形となる
「お、ねが、い...。こ...ろ、さない...で...」
『あたしに命乞いをするのか?自分ではなく、子供の命を助けたところで何になる?』
問いてもなお、答えは返ってくることはなく、呪文のようにただ繰り返すだけ
鬱陶しい
『安心しろ、家族であの世に送ってやる。心配するな』
涙を流し続ける沙也加の表情は悔やみ、苦しみで溢れている