零度の華 Ⅱ
あたしは沙也加から遠ざかり再び赤ん坊へと近づいた
もうじき、沙也加は死ぬ
懐から小刀を取り出し、高く上げ赤ん坊の胸の辺り刺さるように固定する
そして、振り下ろすとともに自分の手を赤ん坊の胸の辺りに置き、自分の左手を刺した
沙也加からしたら赤ん坊が刺されたように見えるだろう
それでいい
苦しんで死んで逝け
『亜紀』
「何でしょう」
先程から動かず壁に寄りかかっていた亜紀の名を呼んだ
『沙也加は』
数歩だけ足を進めた足音が聞こえた後、「死んでいます」と亜紀の声を聞く
あたしは小刀を自分の左手からそっと静かに抜いた
『ッ...』
小刀を抜くと血が流れだし、赤ん坊の服にシミを付ける
周りを見渡し綺麗に畳んでいるタオルを1枚取り、左手の掌に巻いて縛った
「優しい、ですね」
『は?』
「彼女の子を殺さず、生かしているではありませんか。自分の手を犠牲にしてまで」
あたしは亜紀に近づく
亜紀の方が身長が高いため必然的に見上げる形となり、見下される形となる
『勘違いするな。コイツに情けをかけてまで生かしたわけじゃない』
目線で沙也加を指す