零度の華 Ⅱ



『チッ』


腕をつたる血に苛立ちを隠せなかった

咄嗟に避けたものの反応が遅かったため、拳銃を持つ腕に銃弾が当たり、それにより拳銃を落としてしまった


これで遠藤が有利となる

あたしが手を動かそうとする素振りを見せると「動くな」と静止するよう命じる


『これを外したいだけだ』

人差し指で仮面を2回叩く



何も言わない遠藤にあたしは「OK」だと受け取り、ずっとしていた面を取った


取る時に閉じていた目を開けると、言葉には出さず表情は驚いているのが分かる

驚いている理由はおそらくこの瞳(め)と髪の色だろうな



『あたしの素顔を見て惚れたか?』


「この状況で冗談を言える余裕がまだあるとはな」


『まさか。余裕なんてこれぽっちもねーよ』



あたしは作ってもらった仮面を投げ捨て、撃たれた腕に止血のため手を当てる

この状況をどう切り抜けるか、考えるが何も思い浮かばない


今はあの高い音も頭痛も全くない

アレは何だったのか、疑問が残るがそれは頭の隅に置いておく


その間に遠藤があたしとの距離を1歩1歩と縮めてきていた



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