零度の華 Ⅱ
カチャリ
音が知らせるのは距離が0になったことと、あたしの敗北を意味するようなそんな音だった
「もう終わりだ」
銃口は目の前、逃げられないのは確かだ
『殺せ』
あたしの一言に遠藤の眉がピクリと動く
『殺せよ。それくらいあたしが憎いだろ?』
「殺さない。楽になんて死なせない。大切な人を奪われた人の苦しみや怒りを味わって死ね」
"大切な人を奪われた人の苦しみや怒り"なんて分かるわけないだろ
そんなものがいないし、誰が殺されようともあたしの心には傷1つ付くことがないのだから
そもそも、感情の一部があたしに欠けているしな
『お前が殺せないのならば、自分で殺すのみだ』
あたしは言葉と同時に、いつも身につけている小刀を遠藤が反応するよりも早く取り出し、首元に刃を当てる
「今すぐそれを下ろせ。下ろさなければ撃つぞ」
『撃たれる前に刺すまでだ』
遠藤が怯み、チャンスが生まれ形勢逆転だと思い笑みを浮かべたと同時に、またあの痛みがあたしを襲ってきた
顔を歪めると銃声がまた響き渡る
撃たれたのは小刀を持っていた手だった