零度の華 Ⅱ
さっきといい、今といい、あたしが余裕を見せた時にくるこの痛みは何だ
自分自身への忠告なのか、それとも遠藤の味方をしているのか
どちらにせよ、今のあたしにはこの状況を回避する術も策も考えることも出来ず、楽しむこともできない
本気で危機感を感じている
「さっきまでの威勢はどうした。撃たれる前に刺すんじゃなかったのか?」
小刀はあたしの前に落ちて、あたしの血で斑点を作っていた
あたしは大きく息を吸って、吐く
そして、足で小刀を遠くに蹴る
遠藤はあたしの行動に眉を動かしたのを見て、その場に肩膝を立て座ると、遠藤の眉は中心に寄っていた
「何のつもりだ?」
『あたしの負けだ。好きにしろ。抵抗する気はしない』
遠藤は拳銃を握る手に力を込めている
遠藤の中で葛藤があるせいで引金を引くのがゆっくりだ
早く引いてしまえばいいのに、そう思いながら見ていると遠くでサイレンの音が聞こえてくる
それはだんだんこちらへと近づいているようだ
それに嫌忌しているのはあたしだけではなく、遠藤も同じだった