直感的結婚~恋はこれから~
楽しみにしているのは嘘だと聞かされたら、怖じ気づいてしまうのは仕方がない。

ここは私が先に声をかけて、話を切り出すのが良さそうだ。


「お父さん、ただいま」

「ああ、お帰り。二人とも座りなさい」


父が座る向かい側に藍色の座布団が二つ置いてあったので、私たちはそこに座る。


「はじめまして、柏原泰士と申します。本日はお疲れのところ、お時間を作っていただきまして、本当にありがとうございます。それと挨拶が遅れまして、申し訳ありません」


正座をした泰士さんが丁寧に挨拶すると父は訝しげな顔をした。何も変なことは言っていないと思うが、どこか問題があったのだろうか。


「もう済んでしまったことをあれこれ言うべきではないんだろうが、大事な娘を挨拶もなしに嫁にやるようになるとは思わなかった。まあ、君だけでなく美琴も悪いんだけどね」

「その件につきましては、本当に申し訳ありません。もっと早くにご挨拶させていただくべきでしたが」


泰士さんは真っ直ぐと父を見てから、また頭を下げた。
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