溺愛はいらない。
『あの頃、りぃが俺のそばにいることで苦しんでたことはわかってた。』
「え…」
静かに告げられた芯の言葉に、私は言葉を失う。
わかってた…?
『わかってたけど、あの時の俺にはりぃを解放してあげられるほど寛大じゃなかった。りぃを手放したら、もう2度とこの手を掴めない。…そう思ってたから。』
……っ
また掴まれた左手。だけど、違う。今は…私の存在を確かめるように、握りしめてるんだ。
この熱を––私はまだ、覚えてる。
『だけど、何も言わずにりぃは俺から離れていって––正直、焦ったよ。すぐに探し出して、なんとか連れ戻そうって思ってた。』
「っ!」
『でも、自信もあったんだ。りぃに示していたのは…全部、俺の本物の愛だったから。』
簡単に忘れられるほど中途半端な愛なんか私に注いだわけじゃない。と、彼は言う。
その時、悟った。
ああ、私は結局、この人から逃げることはできなかったんだと。
だって––彼の言うように、彼に愛された時間を完全に忘れることはできなかったのだから。
5年も経ったのに。
元カレを忘れる時間をこれだけ与えられたのに、私は忘れられなかった。