黒の村娘といにしえの赤鬼
第六章 新しい暮らし
ー珠々ー


鬼の村に来てから既にひと月あまり経った。
と言っても私の行動範囲は限られているから毎日時間を持て余している。
何かする事はないかとふみさんに言ったらそんな事ありません、どうしてもというなら琴など弾いてはいかがでしょうと言われてしまった。
琴を弾きながら部屋で大人しくするなんて私の柄ではない。
それだったらお料理でもして過ごしたいのだけどそれもだめらしい。

じゃあ何をして過ごせばいいのだろう。
私のしたい事は何でもだめだめと言って…
鬼の姫なら自由にしていいんじゃないの?
私の中ではお姫様というものは自分のしたいようにできて、わがままな印象があるけどどうも違うみたいだ。


「珠々姫様、本日もお届け物がございますよ」

うきうきしながら部屋にやってきたのはふみさん。

「またなの…」


日向さん…じゃなくて時雨に婚約者として認められたあの日から毎日のように贈り物が届くのだ。

新品の着物や置き物など…
どれも高級そうな物ばかりだった。
おかげで殺風景だった私の部屋も今は色とりどりに飾られている。

…全部時雨から貰った物というのが癪だけど。
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