黒の村娘といにしえの赤鬼
「ふみさん、私ちょっと外の空気吸ってくるね」
「かしこまりました。では…」
「あ、いいの。私一人で行きたいから、ふみさんは部屋の片付けをお願い」
「そうですか、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


ふみさんに時雨からの贈り物の片付けを任せて私は部屋の障子を閉めた。

長い廊下を歩いてはすれ違う女中たちに頭を下げられる。
こんな光景も慣れてはきたけど、やっぱり少し照れてしまう。
見た目だけでも胸を張って歩くようにとふみさんに言われ続けたおかげで来たばかりの頃よりはましになった。

にしても庭園に出るだけでこんなに歩かなければいけないなんて…どんだけ広いのこの屋敷は…。
広くて立派な家なんて住むものではないわね。
小夜の家が羨ましいと思ったことはあったけどとんでもない。


やっと庭園についたところで私は縁側に座り、ほっと息をつく。
五月になって過ごしやすい気候だ。
ぽかぽかと暖かい陽だまりに包まれて穏やかな気分になる。
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