そのプロポーズお断りします!
振り向くと大きな人影が近づいてくる。

短い金髪、左耳にゴツい輪っかのゴールドのピアスが2つ並んでる。

ひそめられた茶色の眉に切れ長の強く光る瞳。
彫りの深いくっきりした顔立ち。
黒いTシャツ越しにがっしりとした肩と腕の筋肉が浮いて見える。


もちろん知ってる。
蒼井 大河(あおい たいが)。えーと5歳年上だから今は28歳か…
昔近所に住んでいた。

その機嫌の悪そうな顔。耳のピアス。
乱暴な口調。

変わってない。


「タイガ…さん?」

「おまえはちょっと目を離すと、ロクデモナイ男にからまれてるんだな。悠里。
カラオケは終わったのか?
迎えにいくつもりだったが、手間が省けたな。」
と、口の端をあげて、私をみおろす。

え?迎えに?
なんでカラオケって?


「行こう、悠里ちゃん。」と田沼さんはそばに立った男を無視して、私の腕を引っ張ろうとする。

「やめてください。」と手を振り払おうとするけど、しっかり握られた腕はなかなか引き離せない。

「そいつは俺のオンナ。おっさん、手を離しな。」

「ちっ、違います!」

いや、断じてタイガさんのオンナじゃありません。


驚いた私がタイガさんの不機嫌な瞳と睨み合っていると

田沼さんは怪訝な顔をして、私とタイガさんの顔を見比べ、
「君は関係ないだろ。悠里ちゃん、行こう。」と私の腕を引っ張った。


「こら、悠里、ちょっと会わなかったからって、俺から逃げられるとおもってんのか?」

とタイガさんは田沼さんの手を私の腕から払い落として、私を肩に担ぎ上げる。

「キャッ」と思わず声がでる。


私は米か小麦が入った業務用の袋か?

いや、あんなに軽くはない。(たしかあれは30キロだったかな)とか、つい考えたけど…

ゴリラが獲物を担ぐって図になってるでしょー

いや、ゴリラは獲物を担がないのか?



「タイガさん!降ろして!」

「おまえはこいつとラブホに行くのか?」

「…行きません!」

「ってことだ。オッサン。」と言ってタイガさんは私を担いだままで、スタスタ歩き出す。


「悠里ちゃん、俺と金髪ゴリラ、どっちを選ぶんだ?!」と田沼さんが追いかけてきたけど、


「うるせー!!」

とタイガさんが大声で吠えると、田沼さんは佇んであっけにとられたように私を見送った。

…金髪ゴリラ。

うむ。
初対面の人の意見は正直だ。と感心している場合?


どっちも選んでないって…

と担がれた肩の上で私は大きなため息が出た。


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