晴れのち曇り ときどき溺愛
 その度に言われるのが『だからご機嫌なのか?』という意味不明な言葉だった。


 いつもはご機嫌じゃないみたいだけど、仕事をしている時の下坂さんは確かに真剣で怖いと思う時もある。でも、こんな風に仕事を離れると優しいし一緒にいて楽しい。洗練された動きは人の目を引くのは間違いなかった。


「春臣は面倒な男ですが、いい奴なんでこれからも支えてやってくださいね」


 そう言ったのはこのパーティの主催者の長田さんだった。長田さんは下坂さんの仕事の関係でもあるけど、それ以前に学生時代からの友人だった。二人の間の空気はビジネスで利権が争われるような場所でもホッとさせる。


「圭吾。いらないことを言うな」


「大事な親友の春臣のことを頼むのは筋だろ。それにこんなに可愛い女の子を連れて歩いてお前だって嬉しいくせに」


「今日は仕事で来てるから変なこと言わないでくれ。それに今日は友人としてではなく。ウチの会社のシステムを導入してくれたからパーティにも来ている。だから、会社の方に招待状を送ったのだろ」


「別に春臣が来るならどっちでもいいだろ。で、彼女を紹介してくれよ」


「名前は諸住梨佳さん。システム課の一員で仕事を一緒にしてる。今は井上さんの元を離れ、見城と一緒に仕事をしている」

「初めまして長田圭吾です。今日はお越しいただきありがとうございます」

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