晴れのち曇り ときどき溺愛
 主催者の長田さんへの挨拶が終わると今日の仕事は半分以上は終わったようなものだった。私は下坂さんと一緒に壁際に用意されたソファに座ると下坂さんはその横に静かに座った。

「圭吾は悪い奴ではないけどペラペラと煩い。嫌な思いをしなかった?」

「明るく楽しい方ですね。なんか勘違いされてあったみたいですが、嫌な思いはしませんでした」

「それならよかった。主賓である圭吾への挨拶が終わったら殆ど今日の仕事は終わったが、今後のことを考えて挨拶をしておきたい。緊張するだろうけどもう少しだけ大丈夫?」

「そんなに気を使って貰わなくても大丈夫です。仕事ですから」

 一緒にパーティに参加して、下坂さんの置かれている立場が少しだけ分かったような気がした。主催者の長田さんもそうだけど、ここにはオックスフォード時代の友達もたくさんいて、それぞれの立場でこのパーティに参加してる。


「それならもう少し付き合って貰う。でも、疲れたり、嫌な気持ちになったらすぐに言って。諸住さんに嫌な思いをさせてまで挨拶する必要もない。取引先も大事だけど、一緒に働く同僚はもっと大事」

 厳しいのに優しい。それが下坂春臣。私の知らない顔を持つ人。

 
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