晴れのち曇り ときどき溺愛
 四葉さんが御曹司だというのは分かる。セレブリティな人だとも分かる。でも、知性の欠片も感じなかったし、仕事が出来ると言う風でもない典型的な世間知らずだった。傲慢な性格が表情に現れていて口元が歪み、人を見下しているのを感じさせていた。

 下坂さんや進藤さんとは比べる方が失礼だった。

 でも、この場にいる人が付き合うということが、私の周りであるような普通の恋愛だけではないというのも思い知った。下坂さんと進藤さんと絵里菜さんの話を聞きながら自分の生きている世界との違いを感じていた。

「お兄様。そろそろ帰りません?疲れたわ」

 絵里菜さんはデザートを半分くらいは残したまま、スッと立ち上がった。デザートを食べてからもう少し挨拶をするつもりだとさっきは言っていたけど、そんな気も失せたようだった。それは下坂さんも同じで、心底疲れているようにも見えた。四葉さんと言う存在はここまで進藤さんを疲弊させるのだと思うと、人の関係というのは怖い。


「そうだな。長田に挨拶して帰ろうか。今日は私も疲れたよ」

「それなら、俺も帰るとするか。諸住さんはもう何か食べなくていい?」

「はい」

「じゃ、俺はさっき、長田には挨拶したから諸住さんを送って帰るよ」
< 244 / 361 >

この作品をシェア

pagetop