晴れのち曇り ときどき溺愛
 進藤さんと絵里菜さんと別れたのはホテルのタクシー乗り場だった。絵里菜さんはどうしてもこの場を早く離れたいらしく自宅の車を待つのも嫌だとタクシーに乗り込んだ。余程、四葉さんとのやり取りが嫌だったのだろう。進藤さんはタクシーに乗る前に私に綺麗な微笑みを浮かべ少しだけ残念そうな表情を浮かべた。


「ではまた会いましょう。よかったら、連絡をしてくださると嬉しいです」


 そう言って私に名刺を渡すとそのままタクシーに乗り込んだのだった。そして、そのすぐ後にドアが閉まってしまい、過ぎ去っていくタクシーを見ながら、進藤さんはフッと息を吐く。その姿はとっても疲れているように見えた。


「諸住さん。時間まだいい?」

「何かありますか?」

「お腹空いたんだ。さすがに一人で食べるのはキツイから付き合って貰えればと思って。でも、嫌ならマンションまで送る」


 こんな下坂さんは初めてだった。いつも余裕があって、仕事もバリバリとこなしているのに、今日に限っては『一人で食べるのがキツイ』という。そんな一面も愛しく思ってしまうのだから、恋というのは残酷だと思う。何でも許してしまいそうになる。


「私も少し何か食べたいです。でも、今日はこんな格好ですから、ラーメンは嫌ですよ」


 最初に会ったお見合いの時に誘われたのは小汚いラーメン屋。普通の格好ならいいけど、こんなに可愛らしいドレスを着て、行くと店の方が驚くと思った。パーティ用のスーツにドレスを着た私が行ける場所はそうはない。
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