晴れのち曇り ときどき溺愛
 掴んでいた下坂さんのスーツの袖を放すと、握る力が強かったのかまだ私の掴んでいた跡がくっきりと皺になっている。パーティ用のスーツだから高価なものだというのは分かる。クリーニングで綺麗に皺が伸びるか心配だった。


「本当にごめんなさい。お酒を飲んで出先で寝てしまうなんて初めてです。あの、スーツのクリーニングは私にさせてください」


 正直泣きたくなった。飲んで迷惑を掛けた上に、朝まで袖を掴んだままだなんて…。今でもたまに枕を抱きしめたまま寝ることがあるとはいえ、まさか下坂さんの袖まで握ってしまうとは。


 寝てしまっていたとはいえ、後悔しかなかった。それに私のマンションの部屋は普通でそんなに散らかしてないけど、生活感溢れる自分の部屋を見ながら溜め息も零れる。


「少し落ち着いて。焦る気持ちはわかるけど、昨日は俺も楽しかったから飲み過ぎたと思う。パーティでも結構飲んだし、レストランでもワインを飲んだし。気付いたら遅くなってて、遅早く送らないといけないという気持ちばかりが先走って、諸住さんをタクシーに乗せて、このマンションまで来たんだ。でも、到着して諸住さんが寝ていることに気付いてしまって。勝手に入られたら嫌だったよね」


「重ね重ねすみません」


「俺の方こそゴメン。部屋に入った途端、ズルズルと床に座ってしまったから、とりあえずベッドまで運ばせて貰おうと抱き上げて運んだけど、落ちないように諸住さんは掴んだんだと思う。そのまま俺もどうしようか考えている間に寝てしまったんだ」
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