晴れのち曇り ときどき溺愛
 玲奈の部屋には今まで何回か来たけど、いつも綺麗になっていてモデルルームみたいだと思っていた。でも、維持していたのは玲奈ではなく常務だったというのは驚きだった。


「お兄ちゃんの話は置いておいて、梨佳が私に会いに来たのは合併の理由を聞きたかったからね」

「うん。吸収合併されるほど業績不振だと思わなかった。だから、玲奈なら何か知っているのかもしれないいと思って。あの時なら言えなかったことがあるんじゃないかって」


「そうね。確かに言えないことがいっぱいある。

 梨佳のいう通り、吸収合併の理由は業績不振じゃない。元々、私達の会社の社長と今の吸収合併した会社の社長は親戚よ。今の社長がかなり合理的なことを望む人だから、デザインとシステムの融合らしきことを決め、ついでにやる気のない人はリストラの対象にしたの。もう分かると思うけど、あの時の取引失敗は業績不振になるほどではなかったけど利用しただけ」


「言って欲しかった」

「このことを知っていたのは責任を取った社長とか常務だけだからお兄ちゃんの立場もあって絶対に言えなかった」

「玲奈が言えなかった意味は分かった。でも、なんで常務と玲奈は辞職したの?リストラの対象にはならないでしょ」

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