晴れのち曇り ときどき溺愛
「今回の件で私は父親の弁護士事務所で働くことになったわ。お兄ちゃんはどこで仕事をしても出来る人だけど私はそんなスキルもないし、これからお見合いを躱しながら頑張るつもり。私が好きなのは小松崎くんだもの」


「え?小松崎くんって、拳のこと?」

「そう、ずっと片思いしてる」


 玲奈は秘書課というのもあって同期の飲み会に参加したことはない。私とか遥とかたまに一緒に食事には行ってたけど、琉生や拳が来るような飲み会には参加はしてなかった。拳との接点があるはずはないのに玲奈は拳が好きらしい。

「遥の結婚式で一緒のテーブルだったの。それからずっと好き」

「でも、拳は…」

「知ってる。自分の会社の女の子と結婚するかもしれないんでしょ。そのことは琉生から聞いた。琉生は随分前から私が拳の事を好きなのを知ってる。多分、遥も」

「知らなかったのは私だけ?」

「何度か言おうかと思っていたんだけど、言いそびれているうちに、色々起きちゃって」


 私たちの話を聞いていた常務は静かに溜め息を零した。


「一人の男に自分の気持ちを言えないヘタレな妹が放置できないんだよな。だから、俺も恋愛出来ない」

「お兄ちゃんが恋愛出来ないのを私のせいにしないで」


 入社して伝説を作るほどに告白され続けた玲奈がたった一人に自分の思いを伝えられない人だとは思わなかった。

< 85 / 361 >

この作品をシェア

pagetop