魅惑への助走
 「おい上杉、何やってんだ」


 突然背後から声がして、殺気立った空気に歯止めがかかった。


 「……若干、物々しい雰囲気だな」


 そこにいたのは、五~六人の男女混じりのグループ。


 よく見るとさっき上杉くんと話し込んでいた女の人と、一緒にいた人たちだった。


 「この方々は知り合い?」


 その人たちは、片桐たちとの関係を尋ねた。


 「いえ、今初めて会ったばかりなんですが」


 「それにしては殺伐としてるな。まさか不逞の輩に、因縁付けられてたのか?」


 「まあ、そんなところかもしれませんが」


 「何だと、邪魔してきたのはそっちだろうが」


 片桐の子分が反論する。


 だが旗色が悪い。


 このグループが登場したことにより、片桐一派は少数派に転落してしまったのだから。


 「君たち、もしかして上杉の彼女をナンパして、咎められたことに対し逆ギレして因縁付けてきたのか?」


 グループの代表的存在っぽい人が、片桐に告げる。


 お祭り会場にスーツ姿で、ある意味目立つ。


 でもどこかであったことのあるような人だ。
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