魅惑への助走
 テレビでも活躍する、有名弁護士。


 それに警察まで登場。


 さすがに片桐たちは退却した。


 「次は逃がさないからな」


 またの機会を期してか、立ち去り際に私に一言そう言い残した。


 当面の危機は回避できたものの、問題は完全に解決したわけではなく……。


 「ごめんなさいね。つい長話してしまって」


 さっきの女の人が謝ってきた。


 聞けばその人は、上杉くんの同期で。


 卒業して以来初の再会で、つい話が弾んでしまったとのこと。


 「まさかこんな騒ぎになってしまうとは。本当に邪魔してごめんなさい」


 何度も謝られた。


 一行の中に彼女の恋人という人もいて、改めて謝られた。


 「いえ、何もなかったわけですから。ほんとにお気になさらないでください」


 同窓生のよしみと言うことで、形式的にその後のビアガーデンを誘われはしたけれど。


 上杉くんは丁重にお断りしていた。


 一行も気を遣ってか、しつこく誘ってくることはなく、そのまま挨拶をして去って言った。
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