魅惑への助走
 唇を重ねながら、私のほうから押し倒すような形でソファーに身を沈めた。


 さらに甘いキスを注いで、逃がさないように包み込みながら。


 ……最初は東京の片隅で再会した、ただの同級生だったはずなのに。


 時を重ねるうちに、こんなにも想いが募るものだなんて。


 すっかり恋というものを忘れてしまっていた私は、心の奥から湧き上がる情熱を持て余すしかなかった。


 乾いた体を潤してほしい、それだけを切望しながら。


 「ね、もっと……」


 私をもっと近くで感じてほしくて、その手を取り、薄いTシャツと肌の隙間に誘った。


 シャワーを浴びた後、下着は付けていないので、直に胸の膨らみにその指は届いたはず。


 今までの男だったら、このまま一気に。


 だけどその時……。


 「ま、待って」


 胸に触れるか触れないかの瞬間に、上杉くんは私の手を振り解くように離れ、ソファーから立ち上がった。


 「どうしたの?」


 まさか拒絶?


 恐る恐る次のリアクションを待った。
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