魅惑への助走
 「好き……」


 身を覆いかぶせ、唇を貪るように求め尽くすのも私。


 ずっと上にいるのは私で、私に身を委ねているのが上杉くん。


 男女が逆転しているような気もするけれど、もっともっと私を味わってほしくて、構わず続けた。


 「ねえ、そろそろ始めて……」


 どうも私の一人芝居と化しているものの、上杉くんをその気にさせようとあれこれくり返しているうちに、私の体も濡れてきて。


 体の奥から疼くような欲求を感じる。


 もうこの人を受け入れないと……我慢できない。


 「ねえ。早く」


 今までの男は、こう誘うまでもなく私に入り込んできた。


 有無を言わさず。


 「まだ?」


 なのに上杉くんは、私がもう受け入れ態勢に入り、身を横たえて見せても。


 「……」


 次の行動に移らない。


 「どうしたの?」


 私がこうやって身を委ねているのに。


 あまり待たさないでほしい。
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