魅惑への助走
 シャワーをして、体中に残されていた夕べの痕跡を洗い流し。


 服を着替えて外に出た。


 ほぼ一日ぶりの屋外。


 すでに日は沈んで涼しくはなってきているものの、この時間でも28度くらいあるので、ちょっと歩くと汗が流れてくる。


 「熱いかもしれないけど、手を繋いでいい?」


 隣を歩く上杉くんにお願いした。


 目が合う。


 上杉くんは昨日と同じに見えて、昨日までとは違う。


 一線を越えてしまった私たちは、昨日までのようなただの友達ではもういられない。


 ベッドの上での奔放な私を知られてしまい、少し恥ずかしくもある。


 だけど私だけのものになった上杉くんは、今まで以上に愛しくて。


 もっともっと触れ合いたいという衝動が、くり返し襲ってくる。


 「いいよ」


 上杉くんはその手を差し出した。


 いつものごとく、遠慮がちに私の手をそっと握る。


 逆に私は、もう離れることのないように、強く握り返す。
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