魅惑への助走
 「お腹いっぱい」


 パフェの後に食後のワインまで飲んで、満腹感で幸せな気分のまま店を後にした。


 日曜の夜は、土曜ほどの人通りはない。


 明日の月曜に向けて、家でおとなしくしている人が多いのかもしれない。


 それに昨夜はお祭りと花火大会で、いつもよりたくさんの人たちが集まっていたから。


 今日の夜はいつもに増して寂しく感じられたのかもしれない。


 「酔っ払っちゃったみたい」


 最後のワインが効いてきたのか、ハイな気分。


 意味もなくバレリーナみたいに、歩道で一回転したり。


 「よろめいてるよ」


 華麗なターンのつもりが、上杉くんには危なっかしく映ったようで。


 慌てて私を支えてくれた。


 「おっと、危ない」


 くるっと回ったら、アルコールが一気に回ったのかめまいがした。


 「大丈夫?」


 「大丈夫じゃないから、キスして」


 酔ってハイになり、大胆になっていた。


 「えっ、こんな所で」


 「どうせ誰も見てないし」


 人通りの絶えた商店街、街路樹の横で上杉くんの唇を奪った。
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