魅惑への助走
 「これ……、シリアス恋愛ものかと最初は思ったけど、実はコメディなのね」


 撮影を一旦中断して、休憩を入れた際にりらさんが台本を見直しながらそうつぶやいた。


 「コメディのつもりではなかったんですが」


 私としては実体験に基いた、真面目な話のつもりだったのだけど。


 傷ついた心を癒す女の物語としてよりも、ギャップのある男を鑑賞するほうが面白いとりらさんは指摘する。


 片桐からの指名を受け、親会社からは片桐を大々的に盛り立てるような作品を用意してほしいと依頼され。


 とはいえ片桐にとってプラスになる作品よりも、自分が今書きたいものを優先して書いたものだった。


 相手役にはりらさんの起用が決定し、そちらは疎かにはできないと、むしろ女性のほうを綿密に描いたはず。


 全体的にシリアスタッチな台本だったはずが、りらさんはもっと笑えるシーンを増やしたほうがいいとアドバイス。


 急遽コメディタッチのシーンを付け加えることとなった。
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