魅惑への助走
 「私は受付で今のうちに会計を済ませておくから。明美ちゃんは先に宴会に戻っていて」


 「分かりました」


 飲み放題パーティプランゆえ、最初から料金は定められている。


 社長は会計をしておくと言うので、その補佐として榊原さんも受付に残った。


 私一人がエレベーターで宴会場へ戻る。


 エレベーターを降り、宴会場へと続く廊下を歩く。


 さっきまで偉い人たちのそばにいたため緊張していたが、それから解き放たれほっと一息。


 ほろ酔い気分。


 歩いているうちにさらに酔いが回っていたようで、部屋の前でドアノブを手にしようとした時、ノブが歪んで見えた。


 「あれっ」


 ドアノブが上手く回せない。


 それどころか手が滑って、転びそうになる。


 「大丈夫か?」


 崩れそうな私を心配したのか、誰かが掴まえてくれた。


 「酔ってるの?」


 こんな親切にしてくれる男の人、上杉くんくらいしか思い浮かばない。
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