魅惑への助走
 「飲みすぎたんだね。無理しないほうがいいよ。少し横になれば」


 部屋の片隅に私を横たえる。


 もう少しで打ち上げも終わるから、もうちょっと我慢して、家に帰ってゆっくり寝ようと思っていた。


 こんな打ち上げの場で、接待役である私がだらしなく寝てしまうわけにはいかないし。


 無理して起き上がろうとした。


 「もうちょっとだから。まだ〆の挨拶が」


 「まだ一時間以上先でしょ」


 「?」


 起き上がろうとして異変に気が付いた。


 胸元にひんやりとした風が。


 そして。


 「面倒だから、二人で抜けちゃおうか」


 どこかで体験したようなシチュエーション。


 目の前にいるのは当然、上杉くんなどではなく。


 「片桐さん!? 離してください!」


 どうしてここで片桐と二人きりになっているのか、思い出せない。
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