魅惑への助走
 「理由、考えたことある?」


 「それは。……AVに関わる仕事をしているから、性に奔放だって誤解されるのでしょうか」


 「だったら社長の松平さんも監督の榊原さんも、同じ状況になってるはずじゃない?」


 「あ……」


 りらさんの指摘どおり。


 松平社長や榊原さんも、仕事中に外部の者からセクハラっぽい言動を受けることはあるけれど。


 せいぜい卑猥な言葉を浴びせられる程度で、実際に誘われたり襲われたりするのは私だけ。


 「あの人たちは、付け入る隙がないの。だけどあんたは隙だらけ。今だって私が来なかったら、どうなっていたと思う?」


 「……」


 間違いなく。


 あのまま片桐に最後までやられて、それをきっかけに半ば脅されるような形で、ズルズル関係を続ける羽目になっていたかも。


 「ちょっと強引に迫ればやらしてもらえるなら、その手の噂って業界内に広まりやすいから。すぐにやらせてくれる女ってレッテル貼られて、いろんな男とその都度やらなきゃならなくなるよ」
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