魅惑への助走
 ふーっと息を吐き出した。


 コンビニで会計を済ませ、我慢できなくて店の前で吸い始めた。


 タイミングよく喫煙コーナーがあり、灰皿まで設置されている。


 女性用煙草はニコチン含有量も少なく、煙もあまり出ない。


 メンソールだと、吸った後の口の中も爽やか。


 上杉くんと付き合うようになってから、一度も吸っていなかった煙草に手を出してしまった。


 苛立ちや寂しさを静めたくて、つい……。


 彼氏とも上手くいっていて、仕事も順調なはずなのに。


 思い通りにいかないことや不愉快なこともたまにあって、それはかなりシビアだったりして、一人では手に負えない。


 自分一人では解決できないもどかしさを抱えたまま、また煙草で現実逃避。


 上杉くんと出会い、精神的にも満たされ、煙草は卒業したはずだった。


 しかし一度依存というか常習化したものからは、なかなか卒業できないようで……。


 「あれ? 明美?」


 え!?


 信じがたいことが起こった。


 コンビニのドア付近に、ゴミ袋を手にした上杉くんが立っていた。


 私の横、わずか一メートルくらいのところに。
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