魅惑への助走
 飲み会の場では、今度はビンゴ大会が開催された。


 またしても豪華景品が準備されているらしい。


 私たちの入居するビルがちょうど建設十周年の節目とかで、ビル管理会社が豪華賞品を多数調達してくれたようだ。


 「私、くじ運悪いしな~」


 ブツブツつぶやきながら、ビンゴカードの真ん中に穴を開ける。


 先ほどのボウリング大会にて運は使い果たしたような気がして、大して期待もせずゲームに臨んだ。


 ところが……。


 「リーチ!」


 ゲーム開始後程なくして、私のビンゴカードは効率的に穴が開き、横一列のうち三つの数字が出た。


 それと元々空いている真ん中の穴を合わせると、四つが開いておりリーチ。


 当然私が一番乗りだと思いきや。


 もう一人、私と同時に男の人もリーチを迎えていた。


 ボウリング場で同じレーンだった、葛城さんだ。


 「はーい。リーチの人はその場に立ってー!」


 飲み会会場の座敷にて、リーチに到達した私たちは立たされた。


 こういう時って、リーチ後なかなか最後の一穴が開かず、その間に次々他の人がリーチ、そしてビンゴに到達してしまう。


 その後もずっと自分はビンゴにならないまま、その場に立ち続けて恥ずかしい思いをすることが過去に何度かあった。
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