魅惑への助走
 「ビンゴ!」


 この日は珍しく、リーチに到達して立ち上がってから間もなく、誰にも先を越されないうちに、私はビンゴを迎えることができたのだった。


 もちろん会場内で一番乗り。


 「またSWEET LOVEの明美ちゃんだ」


 「今日は明美ちゃんのためのイベントと言っても過言じゃないね」


 周囲のおじさまたちが、羨ましそうにため息をつく。


 そして私は、ビンゴ大会一位の賞品を貰いに行く。


 「おめでとう! 一位の賞品はペア宿泊券!」


 「えっ」


 さすがに海外ではなく、箱根の高級リゾート地のペア宿泊券だった。


 「いいな~。彼氏と行くのかい? 彼氏に内緒で僕と行こうよ」


 酔っ払っている周囲のおじさまたちにからかわれる。


 私は笑いながら、賞品をバッグに入れた。


 さっきのボウリング大会の賞品は、なんとデジカメ。


 デジカメの入った箱は紙袋も、忘れないように気をつけて持ち歩いていた。


 デジカメに宿泊券、今日の私は金目のものをいくつも所持している。


 泥酔して置き忘れたり、失くしたり、盗まれたりしないように気をつけなくては。


 「明美ちゃん、運が強すぎるよ。僕にも分けてよー」


 ボウリング大会に続いて、ビンゴ大会でも優勝。


 本日の主役の座はますますゆるぎないものとなり、ますますおじさまたちにちやほやされる。


 「本日のラッキーガールに、乾杯!」


 葛城さんがビールを注いでくれたので、乾杯した。
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