魅惑への助走
 「はじめまして。私、武田明美と申しまして……」


 自己紹介を始めると、榊原先輩が自分の後輩である旨を松平監督に伝えてくれた。


 「以前から探していた、私の補佐をしてくれる人材として最適に思えまして、今日は現場を見学してもらうことに」


 「せ、先輩」


 「そういうことだったの。是非見学していって。いいお返事をお待ちしてますね」


 松平監督は自信満々な笑顔で、持ち場へと戻っていった。


 まるで私が間もなくここの一員となることを、確信しているかのように。


 ほどなく撮影が始まった。


 早速裸で絡み合いが始まるのかと思いきや、武石タケシさんも椿さんも服を着たまま。


 普通の恋人たちのように、いちゃいちゃしている。
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