魅惑への助走
 「じゃ、車で行くから。明美ちゃんも乗って」


 「はっ、はい」


 クリーニング終了後、回収に出向くことを考えて、どこの店か確認しておこうと思い車に乗った。


 (外車……)


 ハンドルが逆、すなわち運転席も逆。


 生まれて初めての、外車体験。


 車で五分足らず、地下鉄の駅の近くに、葛城さんの馴染みのクリーニング店はあった。


 「ここ、駐車禁止エリア。停車なら五分くらいなら大丈夫だから、明美ちゃん車の中に残っていて」


 「はい」


 葛城さんはクリーニング屋さんに私のスーツを出し、五分弱で戻ってきた。


 「わざわざすみません。あ、私はそこの駅から地下鉄で帰りますので、ここで」


 ドアに手をかけ、車を降りようとしたところ。


 「いいよ。送っていくから」


 「えっ」


 有無を言わさず、車を急発進させた。


 「そんな。地下鉄でいいって言ってるのに」


 「慌てて逃げなくてもいいよ。……ちょっとドライブ行こうか」


 「ドライブ!?」


 こういう時に限って青信号が続き、車は通りを勢いよく駆け抜けた。
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