魅惑への助走
 「今日は月曜日ですし、明日は火曜日。葛城さんももちろん仕事ですよね? あまり遅くならないほうが」


 どこに連れて行かれるのか、びくびくしながら尋ねた。


 「まだ八時だし。ちょっとくらい付き合って」


 「えっ、いったいどこまで」


 「たまには車で爆走したいんだよね。一人の時は好きな音楽聴きながら走るけど」


 「ならお一人でどうぞ。私はそろそろ帰らないと」


 「彼氏が待ってる?」


 「それもありますが、明日の仕事が」


 「俺だって仕事あるよ。同じ条件じゃない?」


 「そりゃあそうですが……」


 「明美ちゃんをすんなり、彼氏のところに返したくないな……。というわけで」


 環状線を疾走していた車は、突然車線を変更した。


 「え、ちょっと……」


 そして副道を駆け上がり、高速道路へ合流する。


 「やめてください、どこまで行く気なんですか」


 「ガソリンが切れるまで、遠くに行ってみようか」


 「何言ってるんですか」


 慌てて飛び降りようとしたけれど。


 ドアにはロックがかかっている。


 それより葛城さんの車は、この当時ではまだ珍しかったETCが設置されていて、入り口で止まらないまま。


 ノンストップで高速道路へと突入していった。
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