魅惑への助走
 「あの。どういうつもりですか」


 どうすることもできないまま、車は高速に突入し、本線へと合流した。


 「どこ行くんですか」


 私の質問を無視して、葛城さんは余裕の表情でハンドルを握っている。


 「ちょっと! 降ろしてください!」


 ハンドルを強引に掴んだものの、


 「危ないよ。曲がっちゃう。側壁に激突したら大破するよ」


 「何考えてるんですか。私をどこに連れて行くつもりですか」


 「ん……。ガソリンがある限り、どこまでも」


 「ふざけてないで、降ろしてください!」


 降りたくても、ドアはロックされている上に。


 万が一ドアが開いたとして、時速百キロを越える暴走車から飛び降りれば、路面に激突した衝撃もしくは後続の車にはねられるなどして、私は即死するだろう。
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