魅惑への助走
 そっと拳銃を取り出して、銃口を向けようとした時だった。


 「サツキ……。愛してる」


 不意のキスで唇を塞がれ、同時に背中に腕を回され強く抱かれ、サツキは銃を手放してしまう。


 「おい。なんだそれは」


 さすがにリョウは銃に気づく。


 「ごめんなさい。死んで……!」


 銃を取り戻そうとするも、先にリョウは銃を奪い取ってしまう。


 そしてサツキの体をベッドに押さえつけながら、


 「……誰の命令だ」


 冷たい声で訊く。


 「……」


 サツキは何も答えない。


 「俺を狙うとは、相当な組織がお前の背後にはいるんだな」


 サツキは無言のまま。


 「俺が総理大臣の護衛と知ってのことか?」


 「……」


 「言わないなら、拷問してでも口を割らせてやる」


 サツキから奪った銃を、彼女の額へと向ける。


 「私を……殺すの?」


 「口を割らなければ殺す。だがお前を殺すには、銃は必要ないかもな」


 再びサツキの体を開く。
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