魅惑への助走
 「いや……、やめて……!」


 先ほどまでの愛に満ち溢れたものとは異なり。


 今度は陵辱のようなセックス。


 口を割らない罪人に拷問を与えるかのように、彼は彼女を犯す……!


 サツキは祖国ではエリート教育を受け、この上ない優秀な女狙撃手として日本へと送り込まれた。


 そんな誇り高い女が任務を遂行できず、敵に組み伏せられこのように犯されるとは。


 最上級の屈辱だった。


 死に値する、いや死よりもつらいこと。


 その時だった。


 セックスの間、付けっぱなしだったホテルの部屋のテレビから、思わぬ臨時ニュースが飛び込んできた。


 「放送の予定を変えて、臨時ニュースです。今夜アジア某国でクーデターが起き、独裁者とその一族は海外に逃亡したそうです」


 「え……?」


 サツキは驚いてテレビを見た。


 半信半疑だった。


 自分を支配し、操ってきた権力がもうこの世には存在しない……?
< 42 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop