魅惑への助走
 「私に内緒で、クレジットカードでこっそり買い物したの!? これも私が補填しなきゃならないわけ?」


 「違う、誤解だ。俺は私的な買い物なんか」


 「だったらこの請求書は何なの? クレジットカード決済で何か買ったから、こうして請求が来てるんでしょ!? しかも残高不足の通知という形で」


 「だから俺、そんな覚えは」


 「じゃこれらは架空請求? それなら警察に連絡して、きちんと調べてもらうしかないでしょ。そしてこんなのも届いてるんだけど」


 カード会社からの請求書の下に隠れていた、国民年金の未納通知書を取り出した。


 「国民年金の支払いも滞っているの? 将来年金もらえなくなっても平気なわけ?」


 「あ、国民年金……」


 上杉くんの顔色が変った。


 「ごめん、明美」


 「老後無年金者になっても、私が貢いでくれると思って安心してるんじゃないの? あんまり人をあてにしないでよ!」


 私の胸の奥に潜んでいた不満が、言葉として形を現すにつれて一気に増幅していた。
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