魅惑への助走
 そして国民年金も……。


 二十歳から納入義務があって、学生は猶予制度とかもあるのだけど、上杉くんは学生時代はさほどお金に困ってなかったこともあり、猶予制度を使ってはいなかったようだ。


 それ以外にも、経済的困窮者のための保険料免除や猶予制度もあったものの、よく分からなかったのでこちらも私が支払っておいた。


 こちらは未納期間が半年近くもあったため、十万円近い金額……。


 せっかくのボーナスがほとんど消えてしまった。


 「本当にごめん。きっと埋め合わせはするから」


 銀行から引き出し、生活費として保管しておいたお金を渡した時、上杉くんはそっと私を抱きしめてくれた。


 またいつもの、いつになるか判らない約束を口にしながら……。


 悲しくて泣きたくなった。


 お金が勿体無かったからだけではない。


 男にお金を貢いでいるに等しい自分が、非常に情けなく感じられてからだ。
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