魅惑への助走
 「え? あきらめる……?」


 唐突だったので、上杉くんの発言の意味を即座に理解できず。


 対策が間に合わないので、来年は回避して再来年受験すると言ってるんだと思い込んだ。


 「色々考えたんだけど、全然結果が出ないってことは、やっぱり俺には向いてないって判断したんだ。これから就職先探して、」


 「えっ、それって司法試験あきらめるってこと?」


 上杉くんは静かに頷いた。


 これまでもなかなか成績が伸びず、何度もくじけそうになって、その都度私が励ましてきたのだった。


 正直言って、今の状態ならば来年の試験もまた危ないとは思っていた。


 とはいえ今になって、あっさり断念してしまうのも……。


 「今さらやめるなんて……。もう手遅れなんじゃないの?」


 「手遅れ?」


 「これから一般企業に就職しようにも、もう新卒としての肩書きは使えない。まともな就職先なんて見つからないでしょ」


 私は冷たく言い放っていた。
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