魅惑への助走
 「……」


 「煙草を路上で吸うような悪い子は、補導しちゃうよ。生徒手帳出しなさい」


 「ありません……」


 行きたい場所も見つからず、とりあえずは落ち着こうとのことで、葛城さんのマンションを行き先に選んだ。


 実は足を踏み入れるのは初めて。


 「おや? 未成年なのに飲酒までしてるとは。ますます重罪だな」


 「そっちから勧めてきたくせに」


 「これはおとり捜査だよ。引っかかったね」


 「大人はずるーい」


 マンションについて、まずリビングに通され。


 ソファーに座って待っていると、葛城さんは冷蔵庫から外国産のビールを持ってきた。


 それに口を付けながら、ここに至るまでの話をしていたところ。


 路上で一人、煙草を吸っていたところまで話が及んだあたりで、徐々に二人の距離が狭まった。


 「君はどうやら家出中のようだね。家に電話をしちゃおうか」


 「だめ、家に電話だけは……。やめてください」


 「電話をしてほしくなかったら、今すぐ制服を脱ぎなさい」


 「えっ、そんなの困ります」


 いつの間にか二人して家出少女とセクハラ警官になりきって、今まさに服を脱がされそうになっている。
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