魅惑への助走
 「私が初めての相手だったら……。何も知らない葛城さんに、女の体の一から百まで、全て教えてあげたのに」


 その手を取り、私の一番感じる部分に導く。


 「それは恐ろしい。明美が初めての相手だったら、その後に抱いた女誰とも満足できなくなって、結果としていろんな女をポイ捨てする最低な男になってたかもしれない」


 「私のせいで、遊び人になっちゃうの?」


 「初めがあまりに良すぎると、その後出会う相手が誰であろうと物足りなくなるものだからね」


 ふっと上杉くんの顔が頭をよぎる。


 今そんなことを考えてはいけないと、葛城さんとの行為に集中する。


 「さ、そろそろ事情聴取始めるかな」


 「事情聴取?」


 さっきの寸劇を、葛城さんは再開したようだ。


 私が上杉くんのことを思い出して、行為に集中していなかったのを察したのかもしれない。


 「あいつと何があったの? 家出ったって、部屋は明美名義の部屋なんだろ。そこを飛び出すくらいだから、相当な事件があったんじゃないの?」
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