魅惑への助走
 「でも……。せっかく今まで頑張ってきたのに。今から心を入れ替えて頑張れば、今後合格の可能性も」


 「その可能性が限りなくゼロに近いから、明美は苛立ってるんだよね?」


 「……」


 「誰もが夢を実現できるわけじゃない。時には進路変更が必要な局面に、遭遇することだってある。その見極めが大切なんだ」


 葛城さんは高校生の頃、甲子園目指して頑張っていた野球少年だったといつか話してくれた。


 ポジションはピッチャー、道理でボウリング大会の時、投球フォームが綺麗だったわけだ。


 青春の全てを野球に賭け、全身全霊を尽くして頑張ったものの、甲子園の夢は果たせなかったと。


 そして大学時代に肩を壊し、野球の夢は断念したと。


 その後気持ちを切り替えて、新しい何かを始めようとあれこれ模索した結果、今の成功があるのだと……。


 「まだ何とかなる、可能性はある……とズルズル不可能な夢にぶら下がっていると、周りの人も共倒れにしてしまうんじゃないのかな」


 上杉くんと共倒れになるのは……私。


 「今の明美の収入じゃ、あいつの借金まで背負うのは不可能だろ? そこまで責任を負えないなら、さっさと断ち切るべきだよ
< 469 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop