魅惑への助走
 「……例の一件が無事に解決したら、二人きりで旅行に行こうか」


 例の件。


 すなわち上杉くんとの別れ話が、きちんとけりついたら。


 「一泊が限度ですよね」


 葛城さんに車で送ってもらう途中、旅行を提案された。


 窓の流れる景色を眺めながら、私は答えた。


 「スケジュールを調整するから、せっかくだから外国にでも」


 「えっ、そんな何日も大丈夫なんですか」


 「俺が現場にいなきゃ進まない業務以外は、別の者に任せられるから。一段落したら外国に行こう」


 「嬉しいんですが、いったいいつになるか……」


 「早く諸問題は解決させて、外国でずっと二人きりで過ごそう」


 「……」


 周りの目や帰る時間を気にせず、二人だけの世界を築けるのは私も嬉しい。


 その前にまず、手近な問題を一つ一つ整理していかなければ。
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