魅惑への助走
 そっか、主演女優が「竹田朱実」。


 タケダアケミ、私と同姓同名。


 これを私だと勘違いしているみたい。


 「AV女優・竹田朱実をネットで検索してみた。エロすぎる、あんなえげつない作品にも出演していたんだね。ネットに動画がいくつかアップされていたけど、正直見るに耐えなかった……」


 「上杉くん、そこまで見ちゃったの?」


 「最近、明美の外泊が増えたのも気になっていた。見てみぬふりを続けていたけれど、もう限界って思ったタイミングで、まさかこんな事実を知ってしまうなんて……」


 上杉くんは手を握り締めたまま俯いた。


 「見なきゃよかったよ、明美のあんな姿。いろんな男に犯され、声を出して……」


 「ちょっと待って。上杉くん誤解してる。あれは私じゃない」


 「俺だってそう信じたかったよ。だけど顔がそっくりな上、ネットでプロフィール調べさせてもらったけど、履歴が明美のものと一致してるじゃないか。どこをどう否定すれば」


 そう、AV女優竹田朱実ちゃんは。


 有名大学を卒業後、ライターを目指すが挫折してAV業界へ。


 スタッフになった私に対し、彼女はAV女優になったという相違点があるものの、私の経歴と酷似している。
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