魅惑への助走
***


 間もなく新年を迎えた。


 「ほとぼりが冷めたら、籍入れようか」


 葛城さんの腕の中で温もりを感じながら、新しい一年がゆっくりと始まった。


 「籍、ですか」


 「うん。ぼちぼち結婚しよう」


 「えっ」


 突然の展開に、私は驚きを隠せない。


 「独身同士だし、別に問題ないよね。社会的にも、税金対策的にも、俺たち結婚したほうがあれこれ都合がいいし」


 「でも……」


 出会ってまだ数ヶ月。


 その日のうちにこんな関係になって。


 しばらくは二股状態だったため、隠れて密会を重ね。


 私が上杉くんと別れて、初めて関係をおおっぴらにできるようになった。


 上杉くんと別れたのが、ちょうどクリスマス。


 その後入れ替わるように葛城さんから交際を正式に申し込まれて、周囲に公表しても大丈夫な状態になったのだけど、会社はお正月休みになってしまった。


 そんなこんなでようやく、交際をオープンにできるようになった私たち。


 付き合っていることを周囲に公表する以前に、次は結婚話が?
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