魅惑への助走
「俺も明美も、親に頼らないで今日まで頑張ってきたんだから。どんな形で幸せになろうと自由だろ?」
「葛城さん」
「というわけで、落ち着いたら籍を入れましょうって約束で。婚姻関係を結べば、俺の稼ぎの恩恵を明美に与えることが容易になるんだし」
その後のキスの甘い繰り返しの中で。
私はいつしか、葛城さんと結婚することに同意してしまっていた。
正式な婚姻関係を結べば、今の生活が幾重にも保証される。
ちょっと前まで生活費の工面や上杉くんの学費ローン返済などで四苦八苦していた日々が、遠い昔のことのように感じられた。
とはいえ不安がなかったわけではない。
出会ってまだそんなに時間が経っていない、いわばスピード結婚。
こんなに速い展開で、本当にいいのか。
加えて互いの親族誰も同意していない、当事者同士の勝手な取り決め。
いくら自由や権利があるからとはいえ、本当に大丈夫なのか。
それら一抹の不安が心の片隅には存在していたものの、頼りがいのある十歳年上の男の包容力に、私は身も心も委ねてしまっていた。
「葛城さん」
「というわけで、落ち着いたら籍を入れましょうって約束で。婚姻関係を結べば、俺の稼ぎの恩恵を明美に与えることが容易になるんだし」
その後のキスの甘い繰り返しの中で。
私はいつしか、葛城さんと結婚することに同意してしまっていた。
正式な婚姻関係を結べば、今の生活が幾重にも保証される。
ちょっと前まで生活費の工面や上杉くんの学費ローン返済などで四苦八苦していた日々が、遠い昔のことのように感じられた。
とはいえ不安がなかったわけではない。
出会ってまだそんなに時間が経っていない、いわばスピード結婚。
こんなに速い展開で、本当にいいのか。
加えて互いの親族誰も同意していない、当事者同士の勝手な取り決め。
いくら自由や権利があるからとはいえ、本当に大丈夫なのか。
それら一抹の不安が心の片隅には存在していたものの、頼りがいのある十歳年上の男の包容力に、私は身も心も委ねてしまっていた。